いつのことだったか忘れてしまいましたが、たぶん二ヶ月ぐらい前のことです。
　壁掛けの電波時計が、クルクルと回っています。そうか逆回りはできないんだ、たぶん一分も進んではいなかっただろうに、修正するのに困っているんだなと、気の毒になりました。
　その次に気付いた時には、ぜんぜん関係のない時刻を指し動いています。途中で力つきちゃったんだ、また気の毒になりました。 そして翌日、何ももなかったように、正確な時間に戻りました。
　まるで私のようです。失敗や挫折ばっかりですから、過去は振り返りたくありません。前へ、前へ。ちょくちょく力つきて、それでもまた前進あるのみ。機械とはいえ、この時から私の同志になりました。彼は、私より優秀です。パニックになるのは私はしょっちゅう、彼はまだ一回きりです。

　軽快に歩けた秀明さんと違って、私はぶっ倒れそうでした。去年、一ヶ月後には不治の病と宣告されたロンは、ひとこともしんどいとは言いませんでした。
　私は文句ばっかりです。ロンに笑われちゃうな、そう思いながらなんとか完歩しました。